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厚生労働省

2023.02.06MEDISO:インタビュー

認定VCインタビュー 株式会社ファストトラックイニシアティブ・安西智宏様 桐谷啓太様

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「認定VC」は国立研究開発法人日本医療研究開発機構が創薬に特化したハンズオンによる事業化サポートを行うVC(ベンチャーキャピタル)を認定する制度です。今回は認定VCとなった株式会社ファストトラックイニシアティブ(以下「FTI」)の代表パートナー、安西様と桐谷様に、FTIの取組と日本の創薬ベンチャー業界について語って頂きました。

最初に安西様のご略歴を教えてください。

 生命科学の博士号を取得後、コンサルティング会社で2年ほど国内外のバイオ企業の経営コンサルティングの経験を積み、2006年からFTIに参画しています。もともとは基礎研究の研究者でしたが、自身の関わる研究成果を知財化するという一連のプロセスを経験したこともあって、アカデミアで産み出される「知」を社会実装する役割に興味を持ちました。ライフサイエンス分野、特に創薬分野の技術シーズを育成し、新たな治療を患者さんへとお届けする役割として、投資と経営支援の両方を担うVCという存在を知りこの世界に入りました。FTIでは現在ファンド全体の経営を担っています。また、社外取締役や伴走者として、投資先への支援も行っています。より良い「いのち」や「くらし」に貢献するベンチャーに人や技術、資金を橋渡しすることができる点が、キャピタリストとして活動する一番の醍醐味だと感じています。

FTIはどのような特徴をお持ちのVCですか。

(写真 左:安西様、右:桐谷様)

 我々の投資領域についてもお伝えすると、大きくは「いのち」と「くらし」の2つで、前者はいわゆるバイオテックの領域で、ライフサイエンス分野のテクノロジーを新しい治療法や診断法の開発に活用していくセクターへの投資であり、当社では創薬ベンチャーへの投資が中心となっています。後者は医療機関向けのサービスといったヘルスケア領域への投資であり、投資実績でみるとだいたい7対3くらいで、バイオテックが多い状況です。
 我々は投資先の多くについて、その設立のタイミングから関わることを大切にしています。立ち上げのタイミングで社外取締役として経営支援することはもちろん、ときには我々自身が代表取締役としてベンチャーを設立することもあります。単にベンチャーの事業計画を評価して投資するのではなく、例えば技術を持つ大学の研究者と一緒になって事業構想を練り上げながら投資判断を行っています。ですからグローバルに事業を推進するために必要となるヒト・モノ・カネを集めるための計画ができた状態で会社を立ち上げる事ができます。設立から関与する分、大いに手がかかりますが、それだけ徹底的に支援させていただきます。そしてマネジメントを担っていただける適切な方を見つけるまで我々自身が主体的に事業を運営していくこともあり、我々もアントレプレナーシップを持ってファンドを運営しています。

日本の創薬ベンチャーの状況として、以前と変わったと感じる点はございますか。

 我々は主にセラピューティクスにフォーカスし、幅広いモダリティーを対象にグローバルに展開できる可能性を持つ会社、優れた基盤技術をもち様々な疾患でパイプライン開発に応用していくような会社に投資してきました。最近は、ビジネスモデルとアントレプレナーの意識が変わってきたと感じています。これまで国内ではアカデミア研究から生み出された基盤技術を様々な疾患の創薬研究に応用していくような、いわゆるプラットフォーム型のベンチャーが多かったように思います。一方、アメリカでは価値の源泉をパイプラインに求めるのが一般的で、投資家との対話でもプラットフォーム型ベンチャーという言葉の意図がうまく通じないこともあります。国内でも近年では基盤技術をエンジンとしつつパイプライン開発に重点を置いた事業構想を持つベンチャーが多くなってきたように思います。国によるトランスレーショナル・リサーチの基盤整備の強化も一歩一歩進んできましたし、海外の創薬ベンチャーや投資家との連携経験のある若手の研究者も少しずつ増えて来ているように思います。結果として設立時点で世界市場も見据えた高い視座でシーズ開発やビジネスを構想できるベンチャーが増えてきているように思います。

日本の創薬ベンチャーのエコシステムでまだ課題だと感じるのはどの部分でしょうか。

 当社も米国で活動していますが、バイオベンチャーのエコシステムの成熟度は日本のプロ野球とアメリカのメジャーリーグ以上にその差が大きいと感じます。成功事例の数に圧倒的な差がありますし、日本ではシリアルアントレプレナーもまだ少ない。特に創薬ベンチャーは息の長い研究開発が必要になるため、成功や失敗を経験したアントレプレナーを量産していくにはまだまだ時間がかかります。そのため、今行うべきことはグローバルでも戦える技術、マネジメントと共に積極的に海外展開をして、海外投資家からも高く評価されるような状況を作ることと感じています。
 当社も2019年に投資子会社を米ボストンに設立し、日本で設立をした会社や投資先がグローバル市場で活躍するための支援を強化しています。またVCである我々自身も米国のエコシステムの中のクローズドなネットワークに深く入りこみ、プレゼンスを高めていきたいと考えています。その一環として米国でもトップティアのVCとの協調で、現地のバイオベンチャーへの投資を行ってきました。そこで構築したネットワークを活用し、日本のベンチャーを十分にアピールして、国内だけでなく海外からも投資を引き入れる道筋をつくっていきたいと考えています。

創薬ベンチャーが盛り上がっていくためには今後どのような変化が必要でしょうか。

エコシステムを作り上げていく上では、より革新的な事業に挑戦するアントレプレナーやベンチャー、VCをモチベートできる環境整備が必要でしょう。例えば新規モダリティーの研究開発に取り組む場合、研究開発面だけでなく、製造の観点や規制の観点からも国全体で後押しようとする雰囲気作りが重要ではないでしょうか。また日本に本社があることだけで、海外投資家による投資検討の優先順位が下がってしまうような状況は避けなくてはなりません。そのためには研究振興施策に加えて、ファンド関連の法令や税制など、海外投資家が投資しやすくするための環境整備も大切なのかと思います。
 アカデミア発のベンチャーの話になりますが、研究の質は海外にも劣らないものの、データの質や知財戦略、開発プランや事業化プランなど、投資家目線ですぐ検討できるような「パッケージ」にしていくための取り組みやその支援者が不足しているように感じます。
 例えば知財一つ取っても、どのタイミングで、どのような知財を出すのか、実施例としてどのようなデータが必要になるのか、特許取得後にそれをどのような条件でライセンスするかなど、多様な論点があります。研究開発や事業開発にも言えることですが、ベンチャーのエコシステムを作り上げていくには、我々VCを含めて、支援の解像度を上げて行くことが必要だと思います。


(取材者:三菱総合研究所 山口将太・太宰結)

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