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厚生労働省

2023.01.30MEDISO:インタビュー

認定VCインタビュー Catalys Pacific, LLC. ・高橋 健様

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「認定VC」は国立研究開発法人日本医療研究開発機構が創薬に特化したハンズオンによる事業化サポートを行うVC(ベンチャーキャピタル)を認定する制度です。今回は認定VCとなったCatalys Pacific, LLC(以下「Catalys Pacific」)のマネージングディレクターを勤める高橋健様に、Catalys Pacificの取組と日本の創薬ベンチャー業界について語って頂きました。

最初に高橋様のご略歴を教えてください。

髙橋さま01

 2019年にCatalys PacificをBTスリングスビー(同社ファウンダー、マネージングパートナー)と立ち上げました。私自身は大学卒業後、外資系投資銀行(メリルリンチ、モルガン・スタンレー)に務め、特に後半は日本の製薬会社を対象に、企業買収(M&A)や資金調達等、戦略面・財務面から会社の成長を助言・サポートする業務を担当していました。製薬会社の経営層、経営企画や事業開発の担当者が対面でしたが、海外の革新的な化合物やプラットフォーム技術の獲得や海外での事業展開等に関する戦略的な議論を行い、施策の遂行を支援してきた経験が今につながっています。

立ちあげられたCatalys Pacificはどのような特徴をお持ちのVCですか。

 当社の特徴を一言で表現すると「カンパニークリエーション」モデルです。欧米のアカデミア・創薬ベンチャー・製薬企業の研究開発においては、外部の技術やアイデアなどの資源を活用するオープンイノベーションを積極的に推進しています。日本での創薬シーズ開発においては、オープンイノベーションの必要性は広く認識されているものの、欧米ほどには活用されていないと考えられます。当社は、製薬会社で既に臨床に入っている(あるいは臨床直前の)化合物に着目し、そのポテンシャルを評価した上で、社外に導出して外部とのパートナーシップを通じて化合物を開発することを推進しています。その際、日本又は海外で新たな創薬ベンチャーをVCが主導する形で「カンパニークリエーション」を行います。つまり当社が設立する創薬ベンチャーが製薬企業から化合物の開発や販売等に関するライセンシングを受け、当該化合物を開発するのに最適な経営陣や開発メンバーを招聘し、開発資金を国内外のVCと共に提供をして創薬ベンチャーを創出し、育成します。

グローバルな視野でみて、いまの日本の創薬ベンチャーを巡る環境をどのように評価されていますか。

 まず良い面からいうと、間違いなくベンチャーを取り巻く環境はこの10年で大きく改善し、起業しやすくなりました。新規事業を立ち上げる際、大企業よりもベンチャーの方が意思決定や事業のPDCAを回すスピードの速さでメリットがあることは今では自明です。ベンチャーにとっては、投資家は勿論、CRO(Contract Research Organization)・CMO(Contract Manufacturing Organization)といった事業パートナーも格段に裾野が広がっています。
 一方、まだ改善の余地があると感じるのはグローバル化です。元来、創薬エコシステムに国籍はなく、日本のエコシステム、米国のエコシステムといった考え方は馴染まないと考えます。革新的な医薬品の創出に最適なパートナーを世界中から探して、自らの目的達成に向けたパートナーシップを結ぶことが大切ではないかと考えます。また、創薬ベンチャーを支えるVC自体もグローバル化することで、日本発の化合物や技術をグローバルの患者さんへ届けるサポートができると考えています。

ありがとうございました。最後に医療ベンチャー業界を活性化する上で一つ施策を提案するとしたら何がありますでしょうか。

 プル型の創薬ベンチャー支援施策の充実を望みます。プッシュ型の施策、つまり補助金や施設整備といったものは充実していますが、オープンイノベーションを誘引するようなインセンティブをより与えることができないかと思います。例えば創薬ベンチャーが臨床まで育てた化合物については、だれが承認を得るかは別として、独占期間を延長するとか、特別な薬価加算を行う等。経済活動においてリターンにつながるインセンティブ設計を上手くできれば、オープンイノベーションがより活性化する可能性があると思います。


(取材者:三菱総合研究所 森卓也・末松佑麿)

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