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厚生労働省

2023.12.25MEDISO:インタビュー

認定VCインタビュー ジャフコ グループ・小林 泰良様 三浦 研吾様 石元 悠樹様

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国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「認定VC(ベンチャーキャピタル)」シリーズ、今回はジャフコ グループ(以下、ジャフコ)の小林泰良様、三浦研吾様、石元悠樹様にジャフコでの取組と日本のライフサイエンスベンチャー業界について語って頂きました。

 社名
 ジャフコ グループ株式会社
 所在地
 東京都港区虎ノ門1-23-1虎ノ門ヒルズ森タワー24階
 設立
 1973年
 ファンド実績
 ■ジャフコSV7シリーズ
  ・設立日:2022年6月
  ・ファンド総額:978億円
  ・投資対象:高い成長が期待できる国内の未上場企業の株式等
  ・存続期間:2032年
 ■JAFCO Asia S-8 Fund シリーズ
  ・設立年:2021年4月
  ・ファンド総額:US $ 130百万
  ・投資対象:主に中国・インド・東南アジアの未上場企業の株式等等
 ■Icon Ventures Ⅶ, L.P.
  ・設立年:2021年1月
  ・ファンド総額:US $ 235百万
  ・投資対象:主に北米の未上場企業の株式等

※2021年以降に設立されたファンド

皆様のご略歴を教えてください

(小林氏)

小林氏)以前は東京大学医科学研究所で細菌感染症や自然免疫に関する基礎研究に人生を懸けていました。しかし、いよいよ日本が科学研究を究めるだけで食べていけない時代となったと実感し、そもそも研究とは?と初心に立ち返ったとき「研究者の能力の証明は論文のインパクトファクターではなく、誰かを救ってこそ証明できる」「日本から科学力で世界と対等に戦える新しい産業が必要」という考えに至り、大手自動車メーカーの中央研究所の研究職からグローバル製薬企業のフロントまで、複数産業の上流から下流までを渡り歩きました。そのなかで、大企業であっても新しい挑戦に使える予算は必ずしも潤沢とは言えず、画期的な試みほど動きが遅くなることを目の当たりにし、既存事業体の中から新しい産業を作り出すことの難しさを痛感しました。そのようなタイミングでジャフコから声をかけてもらい、「厳選集中投資・ハンズオン」という考え方に共感して参画しました。現在はライフサイエンスを中心とした技術開発系企業に対し、資金提供だけでなく、出資前から立ち上げや戦略立案の支援、出資後のハンズオンまで広く活動をしています。

石元氏)前職は製薬企業の臨床開発部門に入社後、主に事業開発、海外事業に従事していました。開発品の導出入や主に中国・韓国・台湾での事業展開の検討及び支援を行っていました。フランスのビジネススクールに留学した際、多様な国や経歴の人々とディスカッションするなかで、ライフサイエンスを軸に、イノベーションが生まれるスタートアップに深く携わりたいと思うようになり、2023年にジャフコに入社しました。

三浦氏)私は二人とは違い、新卒社員としてジャフコに入社しました。学生時代は、東京工業大学生命理工学研究科でバイオテクノロジーの研究を行い、医薬品の創出に興味を持っていました。私が所属していたラボは基礎研究を行っておりましたが、基礎研究の領域では、重要な研究であるにも関わらず、研究予算が減らされ、事業化・社会実装につながらないという現状を知り、良い研究が社会実装できるエコシステムを作りたいと考えVCに就職しました。ヘルスケアおよびディープテックの領域で投資及び事業立ち上げの支援をしています。

ジャフコの特徴や強みを教えてください

(三浦氏)

三浦氏)私たちが所属する産学・ライフサイエンス投資グループはディープテックを対象としており、こうした企業は一社あたり少なくとも数十億円の資金を必要とします。その規模の投資案件に取り組むには、初期段階から入って全体設計を担い、リスクを取りながら追加投資を行い、資本政策を主導した上でEXITまでお付き合いしていくことが必要になります。そこで重要になるのが、小林も触れた「厳選集中投資」の考え方です。ジャフコには40名ほどのキャピタリストがいますが、一人ひとりがひとつの案件に深くコミットできるように年間の新規投資数は20~30社ほどに絞っています。個々のキャピタリストが責任を持ってベンチャーにコミットできる体制を取っていることはジャフコの特徴であり、強みです。また、ステージに合わせて必要なリソースを供給できる体制も整えています。例えば戦略立案、IPO支援、採用など、各分野で高い専門性を持った人材がサポートします。この点は他のVCにはない強みだと思います。

小林氏)成功したアメリカのライフサイエンススタートアップを独自に100社以上分析していますが、アメリカではリード投資家が魅力ある想定リターンを生み出すために早期から大きな出資余力(チケットサイズ)を用意して、成功前提で事業戦略を構築することで多くのフォロワー投資家を呼び込んでいます。こうして大企業の大型プロジェクトに匹敵する資金力を確保しています。我々もアメリカに比べれば小さいながらも国内最大級のチケットサイズを持って投資案件を絞り込み、投資前から継続的に、臨床戦略、事業戦略から他投資家の方々とのシンジケーションなど、投資先の最大級の成功のために汗をかいてコミットしています。まだ挑戦の段階で日々新しい課題に直面していますが、将来的に資金力だけでなく総合的価値に基づいて「ジャフコに投資してもらいたい」と言ってくれる企業も増えてくると信じています。特定領域に限定されない大型ファンドだからこその多様なメンバーが個々の経験と想いを投資先に注力することで、日本の挑戦へのエコシステムの発展に貢献できることを目指しています。

日本の医療系ベンチャー業界は「人材流動性」について課題を抱えていると指摘されますが、この点をどのように見ていますか

小林氏)大企業から医療系ベンチャーに転職してくる人は確実に増えています。しかし、まだまだ「大企業でのキャリアに不安を感じた(あるいはやりがいを感じづらくなった)方々の候補先」という側面も大きいのではないでしょうか。アメリカで創薬エコシステムを形成するきっかけとなったのはジェネンテックから継続する再現性ある成功に基づいた確信です。人生を懸けた努力によって専門性を究めた若く優秀な人材が確信をもって日本のスタートアップに挑戦する未来を創造することが、今エコシステムを支える我々に課せられた重大な責任だと考えています。創薬に関していえば、エコシステムの先輩方の挑戦から過去十年でリスク・リターンの目線感が投機から投資に変わってきました。ようやくアメリカの1980年代のレベルに成長したと考えています。
 また、医療系ベンチャーが成長するために必要なスペシャリティ=肩書・キャリアは大企業出身者だけではありません。創薬スタートアップの分析では、ブロックバスタークラスの医薬品を生み出した50以上の企業の全ての創業メンバーにはPhD/MD/経営経験者/元創薬医療系企業/元ベンチャー/元ベンチャーキャピタルの6種のいずれかのキャリアを持つ人しかいませんでした。その中で興味深いことに、CEOの1人が6種を兼ね備える場合もあれば、チームで6種類の人材を揃えている場合もありました。アメリカは異なるトップの専門家同士が信頼してチームが作れる環境が既に1980年に存在していて、エコシステムの成熟とともに、複数の専門性での成功キャリアを持つ個人が年々増えてきました。人材流動性とは転職数の多さではなく、多様性のあるチームを構築できるネットワーク、キャリア間の垣根のなさ、そして何よりも、実力次第で個人が人生の目標に本気で挑戦できる寛容性だと捉えています。

日本の医療系ベンチャー業界の活性化のために施策を提案するとしたらどのような案が考えられますか

小林氏)先ほどの人材流動性を一つとっても、アメリカと比べると日本には創薬スタートアップにとって不利な環境や社会通念、制度が幾つもあります。そのひとつに薬価の問題が言えるでしょう。アメリカでは患者さんへもたらす薬剤の社会的価値や研究開発に掛かったコストなどをもとに薬価を企業と政府が交渉して決定するため、本当に価値ある薬を上市して自らで稼げるビジネスを作ることができます。そのため、単一の創薬アセットでもM&AとIPOの両方の出口が可能となり投資家にとってのリスクヘッジとなりますし、外国の薬剤を手に入れて開発する挑戦もできます。一方、日本では薬価を柔軟に決めることができないので、創薬アセットの価値を科学的に証明し、マーケットをもつ他の製薬会社に買ってもらうしかゴールがありません。薬価の問題も併せ、本当に良いアセットほどアメリカに本社機能を置く政府交渉力をもつ製薬企業が手に入れて大金を稼ぎ、新たなM&Aを行う資金の循環ができています。他にも承認機関の問題もあるのではないかと考えています。アメリカでは治験開始前にFDAが「治験でこれを示すことができたら承認する」という具体性のある課題リストを示したり、新たな効果を承認するため挑戦的な設計を合意して治験に入るケースもあると聞きます。そのため、治験の結果が出る前でも実質的にFDAが承認の責任を負い、事業リスクが明確になっていると捉えています。一方、日本の承認機関は指針やアドバイスの提供に留まるため、承認に関する責任が曖昧なまま、投資家はリスクを負うことになり、潜在的なリスクが大きいほど避ける傾向が強まります。

(石元氏)

石元氏)小林もコメントしましたが、現状の薬価では薬を開発するインセンティブが少なすぎると感じています。「アメリカのような自由薬価にすべき」とまでは言いませんが、例えば、小児難病治療薬は薬価を上げて、個人の不摂生によって生じる病気は自己負担割合を増やすといった改革を検討する必要があるのではないでしょうか。代替治療がなく医療ニーズの高い疾患を対象とする研究・ベンチャーに資金が集まりやすくなる仕組み作りが必要と思います。

三浦氏)東京証券取引所が示すバイオベンチャーの上場基準について議論を進めるタイミングが来ていると思います。この基準によって上場を果たすことができた企業も多くあり、エコシステムの拡大に貢献しました。一方で、形式的な要件だけが注目されすぎてしまい、本質的な企業価値が十分に高まっていない企業が上場しているケースもあるように感じます。上場後に薬を上市できたベンチャーは少なく、このままいけば市場からの信用が損なわれる可能性もあります。ではどうすればいいかという答えは私たちでも議論をしているところですが、真に企業価値が高い会社が上場できるという仕組みを作ることが必要でしょう。そのためにも、ジャフコとして成功事例を作っていきたいと考えています。

(取材者:三菱総合研究所 末松佑麿・大島嘉文・鐘ケ江和菜)

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