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厚生労働省

2023.12.22MEDISO:インタビュー

認定VCインタビュー Eight Roads Ventures Japan・香本 慎一郎様 芦田 広樹様

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 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「認定VC(ベンチャーキャピタル)」シリーズ、今回はEight Roads Ventures Japan(以下、Eight Roads)のパートナーの香本慎一郎様、ヴァイスプレジデントである芦田広樹様にEight Roadsでの取組と日本のヘルスケアベンチャー業界について語って頂きました。

 社名
 Eight Roads Ventures Japan
 所在地
 東京都港区六本木7-7-7TRI-SEVEN ROPPONGI 6階
 設立
 2012年
 ファンド実績
 ■第1号ファンド
  ・設立日:2015年
  ・ファンド総額:220億円
  ・存続期間:2025年
 ■第2号ファンド
  ・設立日:2017年
  ・ファンド総額:250億円
  ・存続期間:2027年
 ■第3号ファンド
  ・設立日:2022年
  ・ファンド総額:280億円
  ・存続期間:2032年

AMEDの認定VCにおいて、お二人はご所属のEight Roadsだけでなく、姉妹ファンドであるF-Prime Capital Partners(以下、F-Prime)の担当者としても名を連ねています。両者の関係性や特徴について教えていただけますか

(左より香本氏・芦田氏)

芦田氏)F-PrimeとEight Roadsは両社とも、フィデリティ1社をLP(Limited Partner)にもつファンドです。ブランド名こそ違うものの、常に一緒に行動をしている仲間です。F-Primeは主にアメリカに拠点を持ち、Eight Roadsはアメリカ以外の国をカバーし、日本、中国、ヨーロッパ、インドにローカルファンドを持っています。米国での50年以上の実績と、創薬事業は米国が主戦場となることから、アメリカ市場への展開をはじめから見据えて、F-Primeと必ず共同投資を行っています。このように、我々はグローバルのチーム全体で常に協調することで、ローカルに存在する素晴らしいサイエンスをグローバルに育てることに重きを置いている点が特徴となります。

香本氏) 別の視点から捉えますと、Eight Roadsの各ローカルファンドも担当地域内で設立されたベンチャーのみを投資対象としているのではありません。担当地域外に設立されたベンチャーでも担当地域に関わりがあれば、地域を超えてF-PrimeやEight Roadsの各ローカルファンドが共同投資を行い協力して支援をします。具体例を挙げますと、日本発のベンチャー、日本の技術を用いた海外のベンチャー、日本市場への参入を狙っている海外のベンチャー等が日本のEight Roadsの投資対象となります。
 このような体制をとっているため、クロスボーダーの支援に強みを持ちます。互いの技術を利用したいと考えているアメリカと日本の別々のヘルスケアベンチャーにF-Primeと日本のEight Roadsが共同投資を行い支援をしたことで、通常は数年間かかるクロスライセンシングを短期間で実現させたケースがあります。その他、海外のベンチャーから日本の大手製薬会社へのアプローチを支援したり、日本のベンチャーの技術を海外に発信しビジネス化させる等の実績があります。

日本のヘルスケアベンチャー業界をどのように捉えていますか

香本氏)日本のEight Roadsではヘルスケア分野においては(1)バイオテック/ライフサイエンス、(2)ヘルスケアIT/サービス、(3)メドテックのテーマに投資をしています。日本国内の投資件数としては(1)が多く、(2)と(3)はまだ少ない状況です。(2)と(3)の分野でも頑張っていらっしゃるベンチャーはあるのですが、薬価制度や国民皆保険制度などの日本の社会保障の枠組みが他国と大きく異なるため、投資判断を慎重に行っています。

芦田氏)グローバルにおいても、日本には非常にレベルの高いサイエンスがあると捉えています。一方で、基礎科学を医薬品にしていくための「人材」と開発を支えるための「資金力」が米国と比べると極端に欠けています。

日本のヘルスケアベンチャー業界にポジティブな変化はありますか

芦田氏)アカデミアの先生方がベンチャー設立に前向きになってきていると感じます。少し前までは「ベンチャー設立=お金儲け」或いは「ビジネスは良くわからない」と考えベンチャー設立を忌避する風潮がありましたが、最近は「ベンチャー設立=研究結果を世界に提供する/還元するための手段」と考える方が増えています。我々からアカデミアの先生に事業化の提案をした際に、検討を進めていただけることが多くなってきていますし、先生から我々にご相談いただくケースも増えてきています。

香本氏)起業家と資金の出し手も増加しています。特に、ファンドのLPになる国内大手企業やCVCを設立する製薬企業が増えてきています。製薬企業によるCVC設立増加は、製薬会社が自社開発だけではなくベンチャーの技術を積極的に取り込む姿勢へと変化していることも背景にあります。また、製薬会社が取捨選択を行い人材とアセットをベンチャー業界に送り出す事例も増えています。日本のヘルスケアベンチャー業界にとって良い傾向であることは間違いないでしょう。

逆に、日本のベンチャーエコシステムのボトルネックとなっているのはどのようなことだとお考えでしょうか

芦田繰り返しになりますが、基礎科学を医薬品に育てあげられる人材が不足しています。製薬企業で研究開発に携わってきた人材も当然必要ですが、投資家やパートナー候補に魅力的に映るために「どのようなストーリー構成にすればいいのか」を考え、また「それを効果的にストーリーを語れる」人材も必要だと考えます。そのような人材は必ずしも資金調達を成功させた等の実績がなければ担えないという訳でもありません。創薬業界のトレンドや業界における共通課題、競合環境を理解し、その上で自分たちの位置づけを意識をすれば十分に担えるはずなのです。
 立場上当然ですが、アカデミアの先生方・研究者の方の多くはサイエンスのみに注目しがちで、一歩引いた事業化のストーリー全体を意識できていないことが多くあります。だからこそ、認定VC制度の設立は非常によい施策だと考えています。我々のようなクロスボーダーで活動するVCがアカデミアの先生方・研究者・ベンチャーとタッグを組み、効果的なストーリーを共に磨きあげていければ、日本のベンチャー業界の底上げにつながればと思います。

香本氏)日本の医療の市場規模はアメリカの10分の1ほどですが、VCからの調達額は200分の1ほどになります。この差の原因の一つは、アメリカと日本の医療保険制度の仕組みの違いがもたらす「医療費における私的支出の割合の差や薬価の違い」にありますが、日本は医療効率が高く国民もベネフィットを受けているため、「差を埋めるために日本もアメリカのように私的支出を増やし薬価を上げるべきだ」とは言えません。そのため、この差を埋めるために打てる対策の一つは「日本の強みである科学技術で海外から稼いでくること」だと考えています。特に、経験値の高い海外の人々と手を組み、稼いでもらうことがポイントです。
 ですから、今回の認定VC制度につきましても、極端な話ですが、日本のベンチャーの科学技術を海外で事業展開するために投資を行うVCは日本に拠点を持たず日本語対応もできない海外VCであっても認定VCとしてよいのではないかと思っています。そうすればもっと日本の科学技術に対する海外からの投資が増え、最終的に日本に利益が還元される仕組みができると思います。

(取材者:三菱総合研究所 森卓也・末松佑麿)

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