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厚生労働省

2023.06.19MEDISO:インタビュー

MEDISOインタビュー記事 株式会社セルージョン様

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MEDISOにて作成している「医療系ベンチャー支援ガイドブック-医薬品・医療機器・再生医療等製品等の研究開発を行うベンチャー立ち上げに向けて-」が公開されました。ガイドブックには、複数のベンチャー様による「起業しようと考えている」「起業したけど困っている」という方に向けたアドバイスが掲載されていますので、是非ご参考ください。

MEDISOを利用いただきご活躍されている株式会社セルージョン様からも様々なアドバイスをいただきましたが、紙面の関係上「人材の確保」「知財戦略の検討」の2点のみをガイドブックに記載させていただきました。
そこで、一昨年行ったインタビュー記事を再構成して、ガイドブックに載せきれなかったアドバイスを公開いたします。
ガイドブック:https://mediso.mhlw.go.jp/medisoweb/wp-content/uploads/2023/05/R04_Medical-Venture-Support-Guidebook.pdf
株式会社セルージョン様ホームページ : https://cellusion.jp/


最初に、セルージョン様はどのような会社か教えてください。


セルージョンは慶應義塾大学医学部眼科学教室発の大学発ベンチャーとして2015年に設立しました。私が眼科医として研究していたiPS細胞を用いた再生医療を、患者さまに届けるために開発を進めています。



セルージョン様の再生医療での取り組みについて教えていただけますか。


セルージョンは水疱性角膜症という疾患を対象とする製品の開発を進めています。水疱性角膜症は角膜移植が主な治療方法になりますが、角膜移植を行うには大きく3つの条件があり、それらがボトルネックとなっています。
1つ目は、ドナーの角膜が必要ということ。2つ目は、角膜移植は容易ではなく、経験豊富な熟練医師による手術が必要ということ。3つ目は、ドナーからいただいた角膜を患者さんに安全に届けるために、アイバンクというインフラが必要ということ。これら3つの条件が整っている国や地域は、全世界的にも非常に限られているため、角膜移植の待機患者さんは全世界で1000万人以上もいらっしゃいます。
セルージョンが開発している技術、製品により角膜移植の3つのボトルネックを解消することができます。
1つ目として、iPS細胞から角膜内皮細胞と同等の機能を持つ角膜内皮代替細胞を大量生産することが可能です。2つ目に、角膜内皮代替細胞を用いた治療方法は細胞注入療法と呼ばれ、角膜内皮代替細胞の懸濁液を注射で眼球内に注入して移植するという方法で、角膜移植と比較すると簡単かつ短時間で可能な手術であり、侵襲度も低く患者さんの負担も軽く済みます。そのため、経験豊富な医師ではなく一般的な眼科医でも実施することが可能です。3つ目に、開発している製品は他家のiPS細胞を用いた製品のため、アイバンクがなくとも普通の医薬品と同じように患者さんに届けることが可能です。

2022年にFirst in Humanの臨床研究を慶應義塾大学病院で実施しており、術中及び術後3カ月の経過において有害事象は認められず安全性が確認され、矯正視力、中心角膜厚 は術後経過とともに改善傾向が認められています。
また、セルージョンが主導する治験の準備も進めており、企業治験準備を主な目的として2023年5月に総額28億円 の資金調達を成功させ、フェーズⅠ/Ⅱの企業治験の2024年開始を予定しており、再生医療等新法の制度をうまく活用できれば2026年ごろに日本で上市できると見込んでいます。
並行して海外での開発準備も進めており、セルージョンの再生医療で全世界の患者さんを治療したいと考えています。






羽藤様は医師でもいらっしゃいます。起業のきっかけ、医師が起業するメリット等を教えてください。


眼科医としての臨床と並行して、大学院では角膜移植を受ける患者数が最も多い水疱性角膜症という疾患を、角膜移植に頼らずにiPS細胞を用いた再生医療で治療できないか?というテーマで研究を行っていました。
先にも述べた角膜移植という治療方法のボトルネックである、角膜の供給不足という課題や私のような角膜移植医が少なく、またたとえ角膜移植医が頑張ってもリタイアまでに数千件程度しか患者さんを治療することができないという課題に強い問題意識を持ち、解決のためには大量生産が可能な再生医療というアプローチが必要と考えセルージョンを起業しました。
起業した当初は、眼科の診療もしながら事業を進めていましたので極めて多忙でしたが、事業の早い段階でリードVCが見つかり、ご指導いただき、少しずつ会社を作り上げることができました。その後もMEDISOのご支援等も受けることができ、協力していただける周りの方々に恵まれていました。


医師が起業するメリットとしては、患者さんのカスタマーペインと医師側のカスタマーペインの2面を把握しやすく、ニーズをつかみやすいというメリットがあったと思います。医師のキャリアとしては、今まで医師免許を取り研修医、専修医、そして専門医となり、その後は大学病院に残るか、基幹病院に移るか、開業医となるか等のキャリアパスが主流だと思います。しかし、患者さんのニーズのためにも、新しい産業創成という観点でも、医師が自らの能力を活かして起業するというキャリアも良いと感じています。

セルージョン様のチームビルドの特徴を教えてください。


我々はイノベーションを生み出し、グローバルに活躍するスタートアップとなることを目指しています。そのため、イノベーションの源泉となる、チームメンバーの多様性を重要視しています。現時点でも韓国、中国、フランスの方が在籍しており、国際色豊かなチームメンバーになっています。継続して、多様な価値観を持つ人財を採用していく予定です。
一方で、多様な価値観を持つ人財が在籍しているというだけでは会社は効率的に成長していきません。セルージョンのミッション・ビジョン・バリューをチームメンバー一人ひとりに共有することで、多様な価値観を持ちながらも一丸となって強い成長力を生み出せる組織を作っています。


セルージョン様は海外企業と独占的ライセンス契約等も結ばれています。海外の企業との契約におけるアドバイスはありますでしょうか。


海外企業・国内企業を問わず契約の文言には細心の注意を払いますが、相手が非英語圏の企業の場合、より慎重になる必要があります。相手方が非英語圏の企業の場合は、相手方も我々も母国語ではない英語を用いてコミュニケーションを取るため、それぞれが微妙にすれ違い、重大なミスマッチに発展してしまう可能性を孕んでいます。そのため我々は、相手方の言語も英語も日本語も理解でき、さらに医療系の契約に習熟している方に仲介を依頼することで、安心して契約を結ぶことができました。


セルージョン様は何度もMEDISOを活用されています。MEDISOに対しては、どのような印象をもたれていますでしょうか。


MEDISOには様々な分野でご支援をいただきました。我々がコネクションを持ってない様々な分野の専門家をご紹介いただき、事業化に関する専門知識を学ぶことができました。
事業が進んでくると課題が見えてきますが、社内メンバーだけでその全てに対応できるわけではありません。例えば、臨床研究に進むために欠けているデータは何で、どのような試験が必要なのか等のアドバイスや、事業を進めるためにどのような人材が必要になってくるのかというアドバイスをいただきました。
また、市場調査や製薬企業へのヒアリングなどのサポートもいただきました(現ニーズ出口調査)。資金調達のためにVCへアプローチすると、市場はどれだけあるのか、市場調査のデータに客観性はあるのか、製薬企業は製品をどのように捉えているか、といった質問をいただくことが多く、MEDISOの支援が非常に役立ちました。市場調査には多額の費用が必要のため、起業したばかりのベンチャー企業としては大変ありがたかったです。



最後に、セルージョン様がこれから目指される目標、計画について教えてください。


セルージョンの専門領域である角膜に関する再生医療の開発を進めながら、iPS細胞の技術を活かし角膜以外の疾患に対する治療方法も開発し、世界中のより多くの患者さんを助けたいと考えています。



医療系ベンチャーに対してエールをお願いします。


医学は長い歴史で発展してきたとはいえ、治療方法がない疾患は未だ多く、困っている患者さんはたくさんいらっしゃいます。そのような全世界のアンメットメディカルニーズに対し、我々のような再生医療、医薬品や医療機器、あるいはITを活用したヘルスケア製品等の様々なアプローチで、新しいメリットを届けるベンチャー企業がたくさん生まれると、みんなが幸せになれて良いと思っています。

                代表取締役 羽藤 晋様
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