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厚生労働省

2023.12.15MEDISO:インタビュー

認定VCインタビュー 大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社・魚谷 晃様

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 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「認定VC(ベンチャーキャピタル)」シリーズ、今回は大阪大学ベンチャーキャピタル(以下、OUVC)の投資部長である魚谷晃様にOUVCでの取組と日本のライフサイエンスベンチャー業界について語って頂きました。

 

 社名
 大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社
 所在地
 大阪府吹田市山田丘2番8号 大阪大学テクノアライアンス棟3階
 設立
 2014年
 ファンド実績
 ■OUVC1号投資事業有限責任組合(OUVC1号ファンド)
 ・ファンド総額:125.1億円
 ・設立年:2015年
 ・存続期間:10年間(5年延長可)
 ■OUVC2号投資事業有限責任組合(OUVC2号ファンド)
 ・ファンド総額:106.5億円
 ・設立年:2021年
 ・存続期間:12年間(3年延長可)

最初に魚谷様のご略歴を教えてください

 もともとは住友化学で研究者としてキャリアをスタートさせました。その後新規事業を担当する部署に異動になったのですが、そこで新しいテクノロジーを社会に実装することの難しさを痛感し、一度ビジネスそのものを学びたいと考えて職を辞してMBAを取得しました。MBAの取得に動いていた同時期には、産業技術総合研究所のベンチャー創業支援業務も兼務していました。自分自身でベンチャーを立ち上げる考えもありましたが、最終的にはMBA取得後にOUVCから声を掛けていただき、参画することになりました。 
 OUVCに入ることを決めたのは「大阪大学にはたくさんのシーズがあるものの、経営人材がいないことが課題となっている。もしも起業の意思があるのなら将来的に自ら起業にチャレンジしてみてもいい」と言ってもらえたからです。
 

OUVCの特徴や強みを教えてください

 研究シーズを研究者とともにゼロから事業化するスキームであるカンパニークリエーションに力を入れている点が最大の特徴です。一般的なVCは既存のベンチャーへの投資が中心ですが、我々の場合、アカデミアの先生方が「自分たちの研究が世の中の役に立つかもしれない」「自分たちで社会実装してみたい」と考えるフェーズから伴走し、起業の前に研究シーズが本当に事業になるのか、初期事業仮説をともに立て検証を行うといった支援をします。そのため、必然的に最初の資金調達に関わりますし、単独投資となるケースも多くなります。
 投資先としては大阪大学や他の国立大学発のベンチャーのみを対象としていますが、日本の国立大学発のシーズを扱う海外ベンチャーも投資対象としています。
 また、カンパニークリエーションに関わったり、アーリーステージのベンチャーに投資することが多いですが、それらの場合回収までに時間が掛かるため、ファンドのポートフォリオマネジメントの観点からミドル、レイターステージの企業にも投資しています。
 投資対象領域はディープテクノロジー全般ですが、大阪大学は歴史的に医学部や工学部の研究成果が豊富という背景もあり、創薬や医療機器といったライフサイエンス系の投資先が6割ほどを占めています。当社の支援体制としても医学博士号を持つプロフェッショナル人材をベンチャーパートナーとして採用し、大学の先生方ともサイエンス面で対等にコミュニケーションができるようにしています。 

日本の医療系ベンチャー業界やVC業界には近年どのような変化が生じていると見ていますか

 「ベンチャーの経営は“ヒト・モノ・カネ”」と言われますが、特に金については医療系VCのファンド運用額およびベンチャーへの投資額が増加しています。加えて、AMEDによる創薬ベンチャーエコシステム強化事業といったような政府からの大型グラント等により多様な資金調達環境が整いつつあります。人に関しても業界に流れてくる優秀な人材は徐々に増えています。特に製薬会社などで役職も経験してきた50代から60代の人々が医療系ベンチャー業界に転じて業界を活性化させていると私には見えています。その要因の一つとしてはVCマネー等の資金が業界に流入した結果、業界としての給与レンジが少しずつ上ってきているからで、この流れは今後も加速していくのではないかと感じています。
 このようにポジティブな変化は起きつつありますが、現時点ではまだ結果が十分に伴っていない側面もあります。例えば創薬の領域では新薬が思うように誕生していません。また、上場したものの治験が上手くいかない、株価も低迷し続けるという事例も散見されます。こうした状況が続いていく中でマーケットから十分な信頼を得られず、投資対象として魅力が下がっていくことを懸念しています。
 しかし、日本のシーズは世界で戦えるものがまだたくさんあります。それらを活かして、日本国内にとどまるのではなく、世界中からお金を集め、日本のベンチャーから画期的な新薬を出せるようにし、最終的には日本にお金が還流してくる流れを作っていきたいと考えています。そのような取り組みを通じて、例えば野球の大谷翔平選手のように、世界中の誰もが知っているようなグローバルでの成功事例を創りだすことを目指しています。このような特異点的なホームラン事例に貢献することで、子どもたちがなりたい職業ランキングで医療系ベンチャー企業の経営者やそれを支える投資家がランクインするような社会にしていきたいと考えています。
 これを単なる夢物語にしないためにOUVCも動いています。2023年6月に日本のアカデミアやその付属機関としては初めて、カリフォルニア大学バークレー校発の世界的なスタートアップアクセラレーター「Berkeley SkyDeck」とパートナー契約を締結し、我々の投資先や候補を定期的に派遣することになりました。ここに人材を送り込むことで世界最先端の経営手法を習得すると同時に、アメリカでのネットワーク構築に取り組んでいます。また、この取り組みを円滑に進めていくために、シリコンバレーにオフィスも開設しました。今後、さらなるグローバル展開を加速させていきます。

本日は「人材」に関するご意見を多くいただきましたが、その他に人材に関して行われている取り組みはありますか

 経営人材プールを構築する取り組みに力を入れています。経営人材の採用は、古今東西、業種を問わずベンチャーにとっての普遍的な課題だからです。具体的には、ディープテックに特化したスタートアップコミュニティを運営するupto4株式会社と連携し、これまでに1000人以上の人と面談し、150人以上のCxO人材を発掘しています。
 また、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「大学発スタートアップにおける経営人材確保支援事業(MPM)」という事業に採択されており、その枠組みも活用しながら、大学発のシーズやベンチャーに経営人材をマッチングさせる活動も行っています。
 我々VCは人と金をテクノロジーと掛け合わせて業界を活性化させていくことが存在価値です。今後も医療系を始めとするディープテックベンチャーの創出・支援について様々なステークホルダーとともにこれからも前向きに挑戦し続けます。 

(取材者:三菱総合研究所 森卓也・太宰結)

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